昨今、返礼品の魅力や住民税の控除効果から、ふるさと納税の人気が高まっています。しかし、令和6年度税制改正で導入された定額減税により、この制度に微妙な変化が生じています。両制度の仕組みと、注意すべき点についてお伝えさせていただきます。
①ふるさと納税の基本
自治体への寄附を通じて翌年度の個人住民税から一定額の控除を受けられる制度です。
多くの方がご存知の通り、特例控除額の上限は個人住民税の所得割額の2割となっています。
②定額減税の仕組み
新たに導入された定額減税は、個人住民税の所得割額から一定額を控除するもので、本人1万円、控除対象配偶者または扶養親族1人につき1万円が加算され控除されます。
③ふるさと納税と定額減税の相互作用
ここで注目すべきは、これら二つの制度がどのように影響し合うかです。
・令和6年度
令和6年度分のふるさと納税限度額については、影響はありません。 「定額減税前の所得割額をベースに控除上限額を算出する特例」が設けられているためです。つまり、令和5年中に行った寄附に対する控除は、当初の見込み通りに受けられるのです。
・令和7年度
しかし、令和7年度分については影響があります。
この年度には上記の特例がないため、控除上限額は定額減税後の所得割額をベースに算出されることになります。
特に気をつけたいのは、控除対象配偶者以外の同一生計配偶者を有する場合です。
本人の合計所得金額が1,000万円を超え、配偶者の合計所得金額が48万円以下の場合、令和7年度分の所得割額から1万円が控除された後の額がふるさと納税の控除上限額のベースとなります。
令和6年中に、控除上限額ギリギリまで寄附を考えている方は、事前に令和7年度分で控除される定額減税額を確認しておくことをお勧めします。
④調整給付金について
心配になるのが、ふるさと納税による控除で定額減税の一部を控除しきれない場合です。
こうした事態に備えて、不足額は「調整給付金」として市町村から支給される仕組みが用意されています。1万円単位で支給され、1万円未満は切り上げられるので、むしろお得になる可能性もあります。
結局のところ、ふるさと納税の控除上限額や定額減税の影響は、個人の状況によって大きく異なります。不安な点がある場合は、居住地の自治体や専門の税理士にご相談することをお勧めします。
補足
令和7年10月からはふるさと納税のポイント付与が廃止されることが決まっています。
総務省が令和6年6月に発表した方針に基づくもので、寄附に伴うポイント等の付与を行う者を通じた募集が禁止されます。
ポイント付与を活用したいと考えている方は、令和7年9月30日までに寄附を行うようご注意ください。