医療法人の理事(兼務役員)が産休に入ることになりました。産休や育休を取得すると、給付金が 貰えたり社会保険料が免除になると聞きますが、医療法人の理事(兼務役員)も一般のスタッフと同様と思って良いのでしょうか。 |
以下に詳しく説明いたします。 |
産休・育休と社会保険等
産前産後休業(以下、産休)や育児休業(以下、育休)の期間には、働く女性をサポートする制度が設けられています。 医療法人が加入している社会保険により細かい要件は異なりますが、概ね以下の通りです。※2023年度の状況です。2024年度は変更の可能性があります。◆ 産休中
受給できる給付金等 | ||
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1 | 出産育児一時金 | 健康保険加入者(国保又は健保)は受け取ることが出来ます 1児につき42万円支給されます |
2 | 出産手当金 | 健康保険に加入していれば受給できます 国保(歯科国保や医師国保等を含む)には無い制度です 給与の支払いを受けていないこと等が要件となります 支給額は概ね、標準報酬月額÷30日×3分の2です |
社会保険料の免除について | ||
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1 | 健康保険料 厚生年金保険料 |
免除されます ※国保(歯科医師国保や医師国保等を含む)は免除がありません |
2 | 雇用保険料 | 給与が支給されれば支給額に応じて発生します |
◆ 育休中
受給できる給付金等 | ||
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3 | 育児休業給付金 | 雇用保険に加入している理事であれば受給できます 被保険期間について過去2年間の勤務日数要件があります 賃金 *1 の50%~67%が支給されます 賃金月額の8割以上を受け取っていると支給されません |
*1 ここでいう賃金とは、使用人部分を指します(役員報酬は雇用保険の対象外です)
社会保険料の免除について | ||
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1 | 健康保険料 厚生年金保険料 |
免除されます |
2 | 雇用保険料 | 給与が支給されれば支給額に応じて発生します |
役員報酬、給与の支給がある場合
役員報酬や使用人分給与を受け取ると・・・
受給できる給付金等 | ||
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1 | 出産手当金 | 受け取った分が減額されます |
3 | 育児休業給付金 | 役員報酬のみの場合には影響はありませんが、賃金*1の8割以上を受け取ると支給されません。 |
*1 ここでいう賃金とは、使用人部分を指します
役員報酬を期中変更する時の注意点
産休・育休中に役員報酬を減額しなければならないという事はありませんが、上記のような影響があります。
毎月支給される役員報酬(定期同額給与)は、租税回避を防ぐため改定できるタイミングが年に1度のみ定められていて容易に変更する事はできません。
しかしながら「出産」はやむを得ない事情であるため、「臨時改定事由による改定」として所定の手続き(※)を取れば変更が可能となります。
※臨時社員総会等を開催し変更手続きを行い、議事録等を作成する必要があります。
医療法との兼ね合い
診療所の管理者である兼務役員の場合には、診療所の管理者変更が必要となります。こちらも臨時社員総会等を開催し、必要な手続きをおこないます。
・産休育休中の新たな管理者を理事から選出する。
・保健所と厚生局へ変更届出を提出する。
育児休業中も働けるか
育児休業給付金の受給は「育児休業中である」ことが大前提となります。
週に一度、2~3時間程度の業務で、他の方では代理で出来ない業務等であれば「一時的・臨時的な就労」「恒常的・定期的ではない就労」として育児休業中の業務と認められますが、毎週特定の曜日または時間に診療する様な勤務となると「恒常的・定期的な就労」として、育児休業ではなく時短勤務とみなされ育児休業給付金は受けられません。
ドクターに一部診療してもらう場合は特に注意が必要です。
賞与の支給は可能
産休中の賞与支給は、出産手当金、育児休業給付金、保険料の免除に影響はありません。
・使用人部分の賞与については、算定期間中の出勤状況等に応じて支給することをお勧めします。 給与規定等で定めている場合にはそちらに則って支給額を算定してください。
・役員報酬の賞与については税法上、事前に税務署へ提出済みの「事前確定届出給与に関する届 出」に基づく支給のみ可能となります。支給しないことも可能です。ただし、支給する場合に は届出に記載した通りの金額を支給する必要があります。金額の変更はできません。