クリニックでキャッシュレス決済を導入しようか迷っています。どのような観点で導入を検討したら良いか教えてください。 |
キャッシュレス化については国が推進しており、決済比率は年々増加傾向にあります。経産省が普及率や使用シーンに関する調査結果を公表していましたので、その内容を踏まえ回答します。 |
キャッシュレス決済の種類と保有率
前年同月比の保有率を見ると、スマホ決済の伸び率が高いことがわかります。また全業種を含みますが、特に1,000~3,000円程度の客単価帯でスマホ決済の導入率が高いというデータがあり(※2)、比較的少額の決済に向いていると考えられます。
種類 | クレジットカード | デビットカード | 電子マネー (交通系) |
スマホ決済 (QRコード) |
---|---|---|---|---|
保有率(※1) (前年同月比) |
82% (+2%) |
24% (+1%) |
58% (▲5%) |
54% (+12%) |
手数料 | いずれも平均3%台前半の割合が高い | |||
加盟店への 支払サイクル |
月2回など | 月2回など | 月2回など | 即日、翌日、月2回など多様 |
非接触 | △ | △ | 〇 | 〇 |
保有率は2020年9月時点のデータです
利用意向のアンケートでは、男女ともに60代が最も「どんな金額・場所でもキャッシュレス決済で支払いたい」と回答し(※1)、「この1年間に現金払いしかできず困った場面」としては「病院・診療所」が1位に挙げられています(※3)。
2019年時点では、キャッシュレス決済を行っている歯科医院は29.4%、うち保険診療にも導入している割合は37.1%というデータが出ています(※4)。実際に弊法人の顧問先においても自費診療のクレジットカード決済は対応していても、保険診療のキャッシュレス決済まで対応している医院数は、少しずつ増えている印象ですが、まだ多くはありません。
以上を考慮すると、ミドルからシニア層で少額の保険診療でもキャッシュレスで決済したい、という潜在的ニーズがあると言えるのではないでしょうか。保険診療の売上単価の面では、保有率が高まっている電子マネーやスマホ決済と相性が良いと言えるでしょう。
導入のメリット
・会計の時間短縮
・釣銭の誤り防止
・非接触による感染防止対策
・高額自費患者の未払リスク減少
導入のデメリット
・決済手数料
・導入コスト
・インターネット通信料等の発生
キャッシュレス決済導入のポイント
決済手数料約3%は決して少なくない金額です。高額な自費診療の場合は、未払リスクや患者の心理的負担軽減の面から、クレジットカード決済によるメリットが大きいと思われます。一方、保険診療は窓口負担金分のみ手数料がかかるとは言え、医院によってはメリットを感じにくいかもしれません。
現状、お会計やレジ締め作業に時間がかかって、患者やスタッフに負担がかかっているというケースであれば、キャッシュレス決済による自動化を、自動釣銭機等と比較検討しながら進めてみてはいかがでしょうか。
※1 一般社団法人キャッシュレス推進協議会「2020年度消費者インサイト調査」2021年5月13日
※2 経産省「キャッシュレス決済 実態調査アンケート集計結果」2021年6月18日
※3 三菱UFJリサーチ&コンサルティング「キャッシュレス決済の多様化の動向整理」2018年6月26日
※4 日本歯科医師会「医療機関におけるキャッシュレス化に関するアンケート調査結果」2019年11月