医療費は過去最大の減少幅
厚生労働省 は、2020年度の概算医療費が19年度に比べて1兆円以上減少し、42兆円の見通しとなることを発表(2021年6月25日)しました。緊急事態宣言の発出による外出自粛や、新型コロナウイルスの医療機関での感染を警戒した受診控えが影響しているものとみられ、過去最大の減少幅となる見込みです。
以下の図表 は令和2年4月~7月の医療費の伸び(対前年同月比)です。
2020年4月5月の歯科は前年比▲16%近く医療費が落ち込んでいます。6月は▲0.2%といったん回復基調にのるものの、7月は▲4.0%と減少幅は拡大しています。
出典:厚生労働省「医療保険制度における新型コロナウイルス感染症の影響について」
2020年4月は緊急事態宣言が発令されたことが大きな要因です。小児や高齢者に受診抑制がみられましたし、リモートワークが推奨されたため特に都心の歯科医院で厳しい状況になりました。多くの歯科医院が増患に苦慮されたと思われます。
歯科医院増患の鍵は「安心・安全」
現在も高齢者の受診抑制傾向はありますが、郊外の歯科医院では順調に患者数が回復し、一昨年より患者数が増加している歯科医院もあります。
歯科は比較的回復傾向にあるのですが、ビジネス街では依然として厳しい歯科医院もあります。昨年4月以降、テレワークの影響を受けている医院は回復が鈍い感じを受けます。
コロナ禍の中で増患に成功している歯科医院には、以下の二つの特長があります。
- 感染予防対策を十分に行っている
- 感染予防対策をしっかり伝えている
院内感染対策については、「院内感染対策費の増加について」でお伝えしているとおり多くの医院で積極的に行われています。これまで歯科医院で新型コロナウイルスの感染例が出ていないことからも、歯科医院の感染対策の徹底をうかがい知ることができます。
増患のポイントは、その感染対策をしっかり伝え「歯科医院は安全だ」という認識を持っていただくこと、目で見える安心を与えること、ではないでしょうか。
見せる安心・安全の対策例
- 入口に自動式体温計を設置する
- アルコール消毒はボタンに触れる必要がない自動消毒液噴出装置にする
- 受付にアクリル板や透明ビニールカーテンを設置する
- ソーシャルディスタンスを確保するために待合室の座席を間引く
- 空気清浄機を設置する
- マスクに加えて、ゴーグルやフェイスシールドを着用する
- ランプガイドなど患者様から見える部分をラップ等でバリアする
- 口腔外バキュームをチェアごとに設置する
- 診療前にうがい薬を使ったうがいをしてもらう
これらは感染予防対策として実施することは勿論ですが、患者様が目にすることによって安心感を持っていただける、という効果もあります。このような取り組みをホームページや入口のイーゼル等で積極的に告知を行うことで、新しい患者様の集客にも繋がるでしょう。
ウイルス感染の予防に口腔ケアを
定期的な口腔ケアは感染症の予防と重症化防止の効果があることを伝えることも、増患対策には有効と思われます。
コロナウイルス感染症は、舌の細胞が作り出す受容体に結合することが知られています。つまり、歯科医院で口腔ケアを受けることで感染リスクが低下します。
また、口腔ケアを長期間に亘って中断した場合には、むし歯や歯周病を進行させ、コロナウイルス感染症の重症化に関連するとされる生活習慣病のリスク因子にも影響を与えます 。
このように、口腔ケアの重要性をしっかりと伝えていくことも、増患だけではなく、中断されている患者様の来院を促すことに繋がるでしょう。
コロナウイルス感染のメカニズム、初期症状でなぜ味覚異常が発生するのか、歯科医院から見たコロナウイルス感染に関する情報を入口のイーゼルで掲載している医院が増えています。
単純に感染予防しているというメッセージとともに、コロナウイルスを含め『感染予防』に対する知識がある医院だ、院長だという現われが増患につながっているように感じます。