医療訴訟を起されないために、普段から心がけた方が良いことはありますか? |
患者さんとのトラブルを防止する観点から、次のことに気を付けると良いでしょう。 ・治療方針やリスクについて丁寧に説明し、書面にも残す ・治療費が高額になる場合、またインプラントや審美など自費診療の場合は、診療ごとに診療内容とその報酬額を定めたものを患者に交付する ・治療が終わった部分については診療報酬を請求できる旨の「特約」を用意して、患者さんの都合での中断リスクに備える |
過去の訴訟~医療費をめぐり患者と歯科医師が提訴した事例~
患者は、他の歯科医院で治療を受けた前歯の差し歯が脱落したので、平成21年8月にA歯科医師の歯科医院を訪れインプラント治療を希望した。A歯科医師は患者の希望を了承して治療を開始した。
平成22年7月までに合計46回、歯全般の治療と、右上1番、左上2番・6版、左下6番のインプラント治療を施した。しかしその後、患者が来院しなくなったためインプラント治療を施した部分を含めて冠の装着に至らないまま中断した。
その後、患者は未治療分の訴えを起こした。一方、A歯科医師は未払い分と慰謝料を求める反訴を提起した。
東京地方裁判所 平成24年12月14日判決
裁判所は、
①診療時に診療契約が締結されている一方で、具体的報酬額については合意されていないこと
②診療の具体的内容も、治療の進行を待たないと確定しないものであること
から、初診時には、具体的な診療内容が確定した時点で相当額の診療報酬を支払うとの合意がなされていたと認定しました。
その上で、A歯科医師はインプラント地y朗についての説明において、診療ごとに診療内容とその報酬額を定めた書面を冠じゃに公布していたため、すでに支払われた204万円は診療報酬の一部にすぎないと判断しました。
初診時に診療の全容が確定しないケースもよくあると思いますが、そうした場合でも治療の進捗に応じて診療報酬を説明するとともに、書面に残すことが重要でしょう。
参考:日本歯科新聞