医院経営の安定に、生命保険はどのように活用できるのでしょうか? |
経営の安定と将来的な承継を考えたとき、「企業防衛」と「退職慰労金準備」の2つの観点が非常に重要です。それには生命保険の有効活用が大きなカギになりますが、昨年4月に大きな動きがありました。 |
生命保険会社が積み立てる責任準備金の計算に用いる「標準生命表」の改定が行われました。今回の改定では、40歳男性の死亡率は「1,000人に1.48人」から「1.18人」となるなど、長寿化を反映した結果となりました。
「生命保険」は値下げの傾向にある?
今回11年ぶりの「標準生命表」改定により、「生命保険」は値下げの傾向にあるようです。特に、掛け捨ての死亡保障である定期保険(保険期間が一定の死亡保険)や収入保障保険(死亡時には満期まで毎月定額が支払われる死亡保険)では、今保険を見直すと、保険料が累計で数十万円も得をする可能性があるようです。
契約者別にどのような影響があるのか、ポイントを絞ってみてみましょう。
契約者・保険料負担者=個人の場合
個人医院の場合、院長に万一の事態が発生したときや現役を引退する時には、院長個人としての備えだけが頼りとなります。高額な医療費や、急な入院に伴う収入減少などの生前リスクに備えて医療保険をご検討されてはいかがでしょうか。
医療保険やがん保険など「第三分野」と呼ばれる商品では、長寿化に伴って医療機関にかかる可能性が高まり、保険金や給付金の支払いが増えるため、理論上は値上げとなります。
各社の主線状となる医療保険、がん保険とともに値上げには慎重の要ですが、生保業界でもデジタル化の波が激しくなってきています。個人のDNAを解析した予防医療分野も著しい進歩を迎えるなど、さらなり長寿化を控えての値上げはまだこれからといった様相です。
契約者・保険料負担者=医療法人の場合
医療法人の企業防衛としては、理事長に万一のことがあった場合のリスク対策として、借入金返済資金を始め、運転資金と固定費、納税準備資金などの各種財源を確保する必要があります。
個人医院では経費処理とはならないものの、医療法人の場合は損金算入できる支出項目がいくつかあり、その一つが医療法人を契約者とし理事長・理事を被保険者として加入する定期保険です。生命保険商品によっては、「企業防衛資金」と「退職慰労金準備」を同時に確保することもできます。税負担軽減効果を考慮した場合、保険料の実質負担はより小さいものとなるため、リスク対策としてコストを圧縮することが可能です。
金融庁・国税庁が規制を強化
しかしながら、税負担軽減ニーズを上回るほど加熱した販売に、金融庁・国税庁が規制を強化したため、生保大手4社が販売停止に踏み切ったニュースはご記憶に新しいことでしょう。対応が未定の生命保険会社もあり、3月末までに決算対策で生命保険加入をご検討される場合もあると思いますが、節税目的で慌てて加入することは大変危険です。税務署から損金算入を否認された場合には、節税どころか重課税となるリスクをはらんでいます。
重要なことは、医業経営として現時点で必要な「企業防衛資金」の額を把握するとともに、税負担を軽減しながら「退職慰労金準備」を行う具体的な方法を知ることです。