緊急事態宣言中に診察を控えていた患者が戻ってきて、最近医院も忙しくなってきました。スタッフに残業をしてもらうこともあるのですが、残業代はどのように計算したらよいでしょうか。 |
労働基準法によって、支払義務が定められているものは労働時間(原則は1日8時間、1週40時間)を超えて行われた時間外労働に対するものです。 |
残業代の計算式
1ヵ月の残業代=時間外労働の時間数(時間)×1時間あたりの賃金(円)×1.25
┗ 1時間当たりの賃金(円)=月給÷1か月の平均所定労働時間
┗ 平均所定労働時間=(365日-年間所定休日数)×1日の所定労働時間÷12ヶ月
※月給に含める手当は役職手当、職務手当、衛生士手当、ホワイトニング手当、自費手当(毎月支払われるもの)等、含めない手当は賞与、通勤手当、住宅手当、出産祝金、勤続表彰金 等となります。
※労働時間数の計算は、原則として1分単位で行わなければなりません。
36協定は結んでいますか?
原則として従業員に残業をさせる場合には、労使間で36協定(労働基準法36条)を締結し、雇用主は「時間外・休日労働に関する協定届(36協定届)」を労働基準監督署に提出しなければなりません。届出を提出せず、時間外労働をさせた場合、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金を科される可能性があります。(必ずしも、罰則が科される前に是正勧告があるとは限りません)
具体的な残業代計算の例
(例)
基本給 180,000円/職務手当 5,000円/通勤手当 10,000円
年間所定休日 120日/1日8時間勤務
1か月で12時間15分の残業をした場合…
(1)平均所定労働時間を求める
(365 – 120)日 × 8h ÷12ヵ月 = 163.333 ≒ 163.3h (小数点第2以下切り捨て)
(2)1時間当たりの賃金を求める
(180,000 + 5,000)円 ÷ 163.3h = 1132.88 ≒ 1,133円
(1円未満の端数が生じた場合は、50銭未満の端数を切り捨て、50銭以上を切り上げ)
(3)毎月の残業手当の額を求める
1,133 円 × 1.25 × 12.25h = 17,349円 17,349円を残業代として支払う
(1円未満の端数が生じた場合は、50銭未満の端数を切り捨て、50銭以上を切り上げ)
残業代計算のポイント
- 計算途中で端数処理をする必要がありますので留意しましょう。
- 原則として労働時間は、1分単位でカウントする必要がありますが、1か月間※における時間外労働、休日労働、深夜労働の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合は、30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げることもできます。 ※1日の端数処理ではありません。
残業代が正しく計算されないと、従業員と給与未払いのトラブルに発展するおそれがあります。この機会に一度、見直しを行いましょう。