相続税法上、出資持分のある社団医療法人と持分のない社団医療法人の違いは何ですか? |
理事長が医療法人へ支出した資金の性質がそもそも異なりますので、理事長の相続財産を計算するうえで財産の評価方法が異なります。生前の相続税対策も異なってきますので、注意が必要です。 |
◆出資持分のある社団医療法人
出資持分のある社団医療法人とは、その定款に出資持分に関する定めのある医療法人のことです。平成19年の医療法改正により新規設立はできなくなりましたが、既存の出資持分のある社団医療法人については経過措置がとられており、「経過措置型医療法人」と呼ばれています。
出資持分のある社団医療法人の場合、支出した資金は出資ととらえられますので、相続税法上「取引相場のない株式」の原則的評価方法に準じて計算されます。一般的に医療法人の純資産額が高くなれば高くなる程、その資産の評価額は高くなります。
◆出資持分のない社団医療法人
出資持分のない社団医療法人とは、定款に出資持分に関する定めがない医療法人のことであり、基金拠出型法人と特定医療法人、社会医療法人の3つがあります。基金拠出医療法人が、平成19年の医療法改正以降に医療法人を設立する場合には、最も一般的な形態となっています。
出資持分のない社団医療法人は、運営資金を「基金」によって調達しています。理事長は法人成りの際に拠出者として社団医療法人に対して金銭・資産を提供します。理事長は、基金を医療法人から返済してもらう権利は有しますが、医療法人が破産した場合には、通常の債権よりも返済順序としては後になります。その為相続発生時には、貸付金等と同様の評価となり、出資した金額がそのまま相続財産の評価額となってきます。
出資持分のない社団医療法人は、相続財産としての価格が医療法人の資本の状況によって変動しません。一方、出資持分のある社団医療法人の場合には、純資産額が高くなれば高くなる程、その資産の評価額は高くなります。その為、医院の状況によっては、多額の相続税が発生する可能性があります。早めの対策をとらないと、病院・診療所経営が立ち行かなくおそれがありますので、特に出資持分のある医療法人の事業承継をお考えの方は、ぜひとも税理士にご相談のうえ対策を検討されることをお勧めします。